コンセプト
戦後、時は流れ戦争の記憶や記録が風化され始めている昨今。
「後世に語り継いでいく」をモットーに、「永遠の図書室」では当時の資料や戦争関連の図書などの公開を行っております。
また、当時実際に使われていた品々の収集、解析、保管活動を行っております。
歴史を守り、歴史に触れる場所。それが永遠の図書室なのです。
沿革と蔵書数の特徴
今は1階が「永遠の図書室」となっているビルは元は飯塚薬局として長く地域に根ざしていた薬局で、1階が薬局店舗、2・3階は元の所有者が暮らす住居でした。
2019年秋、主催者の漆原秀は縁あってこの建物を購入しました。館山市内の南町の交差点に面した半円形のビルが取り壊されるかもしれないと聞いてのことでした。
シェアオフィスにすることを想定して入手しましたが、その中に眠っていた大量の残置物から、元の建物所有者である飯塚浩氏が遺した膨大な史料が出てきました。戦争関連の書籍、資料、手記などは約3000点。迷った漆原は大学時代からの先輩であり、軍事研究に造詣の深い藤本真佐に相談。
「民間レベルでこんな種類と量の残されている場所はない」
「誰もが閲覧できる図書館のような場所にしよう」
その言葉に心を動かされ漆原は、民営軍事関連図書室として「永遠の図書室」を始まりました。
「永遠の図書室」に納められている蔵書は現在約4700冊*。飯塚氏本人が陸軍の出身であるため、蔵書は陸軍関連の物が数を占めています。 (*2022年10月現在)
市販本が並ぶ棚の中で、飯塚氏自身が纏めた史料・手記の数は47冊。文章量としては市販文庫本にして約300冊にあたる量です。戦中の出来事や戦後の営みを書いた手記からは、一個人の目で見た昭和史の姿が映されています。
さらにファイルの中には、当時発刊された雑誌に掲載された戦争についてのコラムや写真等の資料が詰まっており、どのファイルからも新鮮な情報が受け取れます。
自筆の手記の中には、昭和6年から7年までの日々を綴った、飯塚氏自身が少年時代に書いた日記もあります。令和の世に昭和6年当時の小学生の日記を手に取って読めるのは、恐らく永遠の図書室だけではないかと思われます。
他にも陸軍士官学校第56期生の名簿や予科生の文集、さらには予科士官学校時代の教科書も保管されております。国語や数学といった現在でも学んでいる教科から、兵器学や築城学、場学などの軍事教育が垣間見える教科書も揃っております。その数の多さと内容からは、当時の教育のレベルの質と量が垣間見えます。
寄贈品のコーナーでは、この図書室の開館以降、全国の方々からご寄贈いただいた大切な品が展示・公開されております。日中戦争時代のアルバムや同期たちと撮った写真、勲章や所蔵していた本、メモ帳や軍事郵便のやりとりなどが並び、その持ち主も陸軍、海軍、関東軍と戦地も所属も様々。
展示品コーナーの品もお手に取ってご覧になることができますので、気になった方はぜひ手袋着用の元、じっくり資料と向き合っていただければと思います。
多くを占める市販本は、現在ご寄贈によりその数を着実に増やしております。
当初は薄かった海軍関連の蔵書も、現在では戦艦、戦闘機、手記、戦記などジャンルも冊数も増えました。寄贈により集まった書籍は、現在1483冊になります。
陸軍関連の蔵書はさらに40ものカテゴリーに分かれて陳列されています。
例えば、フィリピン・ガダルカナル・マレーシア・インドネシア、インパール、ビルマ、太平洋など、一括りにされそうな戦地を分けているのも見どころのひとつと言えましょう。ピンポイントで知りたいものの史料が見つかります。
さらには戦地だけでなく、人物について書かれた本も多数置いてあります。こちらのカテゴリーが作られているのは辻政信、石原莞爾、山本五十六、瀬島龍三、乃木希典、東條英機の6人。ですが、他にもカテゴリーになってこそいないものの、米内光政や山口多聞、近衛文麿など昭和を生きた軍人や政治家たちについて知ることのできる本が揃っております。
昭和を生きたのは名のある軍人だけではありません。戦時下を生き抜いた女性や子供たちについて記述された本が納められている「女性・子供の戦争・暮らし」のコーナーや、戦争を経験した者たちの「手記・証言・談話」、他にも「天皇・皇族」や「特攻」などのコーナーもあります。市販本の中には昭和の当時販売されたものも数多く含まれております。戦後すぐの本ともなると劣化が激しいものもございますので、手に取るときは優しく読んでくだされば幸いでございます。
図書室には文章から入る歴史だけではなく、当時撮られた写真からなる雑誌や写真集、のらくろや陸軍二等兵物語、水木しげる氏の戦争を描いた作品や昭和に発売された漫画雑誌など、目でみる歴史の本も多数揃っております。写真や図、解説などの載った大型本など多様な種類があるため、ぜひお手に取って頂ければと思います。
その他にも当時の音源が残っているレコードやカセットテープなど、音の歴史もございます。こちらは多数ありますので、お聞きしたいものがあれば店番にお気軽に声を掛けていただければと思います。
目で見て触れて、耳で聞いて、思考することで自分の中に落とし込む。それが可能な、歴史と触れ合える場所。それが「永遠の図書室」なのです。